うんこと時空のさざ波と
どうして毎朝太陽が登るのか?
夜空に浮かぶ星は一体何なのか?
りんごはなぜ木から落ちるのか?
なぜ水の滴はポチャンという音がするのか?
地球とはなんなのか?
宇宙とはなんなのか?
古代ギリシア、果てはメソポタミアの時代より、人々は多くの疑問に頭を悩ませながら生きてきた。
一部の人々は、考えるのをやめ、神などという荒唐無稽な存在に全ての起源を求めた。
キリストの母マリアは処女らしい。
考えるのをやめなかった人々もいた。
彼らは皇帝に殺されようが、迷信を崇拝する人々による裁判で有罪にされようが、人種差別を受け迫害されようが、秘密警察に捕まろうが、考えることをやめなかったのである。
そう、科学者たちだ。
現代の科学者たちはさておき、現在知られているような昔の科学者は偉かった。
なぜなら、偉くない人はそもそも記録に残らないからだ。
相対性理論という理論がある。
どうやら量子物理学と並んで現代の物理学の根幹をなしているらしい。
相対論には重力を考えない特殊相対性理論(1905年)と、重力を含む一般相対性理論(1915年)というものがある。
この二つが共にアインシュタインにより提唱されたものという事実には驚嘆するほかない。
余談だが、アインシュタインは量子論のコペンハーゲン解釈には懐疑的だったらしい。
波動関数の収縮ではなく、なんらかの隠れた変数があり、収縮する前に物事は決定していると考えていたようだ。
詳しくはEPRパラドックスとでもググっていただきたい。
相対論は両方とも我々の生活に身近で、例えばGPSなどは一般相対性理論の補正を考慮しなくては、1日で14kmもずれてしまう。
そこのPokemon GOで遊んでいるあなたも実は一般相対性理論のお世話になっている訳である。
一般相対性理論とは、簡単に言うとエネルギーを持つ物体がその周りの空間を歪め、重力を作り出すという理論である。
例えば、太陽を考える。太陽は2×10^33gもの大質量を持っているので、この質量により太陽の周りの空間は歪められるのである。
そして、その歪められた空間を地球などの惑星はまっすぐに進むのであるが、空間の歪みゆえにまっすぐ進んでいるのに楕円軌道をとるのである。
(アメリカ大陸を横断する人は真っ直ぐ進んでも、地球規模で考えると地球が丸いので球面上を進むことになる)
イメージとしてはトランポリンの真ん中に人が立つと表面が歪み、ボールを転がすと表面の歪みに従ってカーブするイメージだ。
これが一般相対性理論の概観である。
ところで、トランポリンの真ん中にいる人が飛び跳ねると、それに従って表面は歪む。
続けて飛び跳ねると、それに従って表面は歪み続ける。
トランポリンがとんでもなく大きいと、真ん中から波紋のようなものが伝わっていくこととなる。
この歪みが波のように伝わる現象は重力の場合にも起こり、重力波と呼ばれている。
すなわち、ものが動くと、周りの空間を歪め、その歪みが時空のさざ波として伝わるのである。
この重力波は2015年に初めて発見され、去年のノーベル物理学賞にも選ばれた。
この発見された重力波は、ブラックホールが合体するという途方もなく大きい規模の運動でつくられたものであるが、一般相対性理論に従えば、小さな運動においても重力波は発生するのである。
(どんなに小さな人でもトランポリンを歪めるということ)
例として、巨大なうんこを考えよう。
簡単の為に直径3cm、長さ30cmで500gの円柱型のバナナうんこがお尻から地面に垂直に放出され、50cm下の便器の底に90度回転してポチャンと落ちたとしよう。
重力波の振幅を計算する有名な四重極公式によると、このうんこの回転運動により放出される重力波の振幅は、1m離れた地点において、オーダーが
10^(-51)
つまり、
0.000000000000000000000000000000000000000000000000001
となる。
わかりやすく言うと、うんこの重力波により、うんこをした人間の顔は(顔の直径を15cmとすると)
0.000000000000000000000000000000000000000000000000015 cm
だけ変形することとなるのである。
ちなみに水素原子の大きさは
0.0000000000001 cm
である。
このように、非常にちいさい大きさではあるが、うんこをするときには我々の顔はうんこの重力波により歪んでいるのである。
今後、うんこをする際には
0.000000000000000000000000000000000000000000000000015 cm
だけ顔が歪んでいるなあと思いながらうんこをしていただければ、筆者としてこれほど嬉しいことはない。